日々の緊張・イライラとみんなどう向き合ってるの?
緊張・イライラ対策のスペシャリストに聞いてみました。

『緊張する場面ほど楽しむことを忘れない』 佐々木 則夫先生 『緊張する場面ほど楽しむことを忘れない』 佐々木 則夫先生

  • 前編
  • 後編

「大好きなサッカーができる」
という想いが、緊張を力に

授業を抜け出して、“サッカーの神様”と呼ばれたペレを観に行くほどサッカーが大好きだった少年時代。転校した小学校にサッカー部がなかったり、中学時代は大きなケガでサッカーができない時期もありました。その反動もあり、「名門校で全国大会を目指そう」と帝京高校に入学。念願の全国高校選手権に出場した時はさすがに緊張しましたが「注目される大きな舞台で、大好きなサッカーができる」とマインドを切り替えることで、失敗を恐れずに精一杯プレーすることができました。試合結果を大きく左右するPKを嫌がる選手もいますが、私の場合は「勝負を決める大事な場面でチャンスをもらえた!」と張り切っていましたね。10代の頃に身につけた“緊張を力に変える”思考法は、サッカー日本女子代表の監督になってからも活きることになりました。

小さな成功の積み重ねが、
壁を乗り越える自信につながる

サッカー日本女子代表のコーチを経て、2007年に監督就任。日本女子サッカーの特長を活かす戦術を取り入れたチームづくりをしながら、『2008年 北京オリンピック ベスト4』を目標に掲げました。一方、当時は世界大会の実績がなかったこともあり、自信がないことがプレッシャーになって表れる選手もいました。そこで、トレーニングや強化試合の中で、ゾーンディフェンスの導入など、過去にはできなかった戦術・スキルを可視化することにより、一人ひとりが成長を実感できるマネジメントを心がけました。 国際試合を勝ち進むうちに、いつしか“仲間と共に大好きなサッカーを楽しむ”という空気がチームの中で自然と生まれていき、東アジアサッカー選手権2008(中国・重慶)で初タイトルを獲得、北京オリンピックでベスト4という成績を残すことができたのです。帰国後、選手たちから「次はチャンピオンを目指したい」という大きな目標が出てきた時、人は変わるものだなと驚きましたね。

2011年 ドイツW杯出場
高まる期待とプレッシャーの中に“笑い”を

予選リーグを突破し、ドイツW杯出場が決まってからはサッカー日本女子代表への注目が一気に高まりました。選手には世界と対峙するというプレッシャーに加え、日本中のサッカーファンの期待に応えなければならないという、目に見えないプレッシャーもかかっていました。その中で、普段通りのプレーをするために大切にしていたのが、真剣に練習する中に“笑い”を取り入れることでした。 重要な試合の前には、試合シーンや応援メッセージをまとめたモチベーションビデオを観るのですが、ラストカットに思いっきりシュートを空振りしているシーンや、鮫島 彩選手がスライディングして正座になってしまったシーンなどを入れてみんなで笑い合ったり。ファンメッセージの中に、「次の戦いは自分を信じて、仲間を信じて、大好きなサッカーにチャレンジしてください。 50代 埼玉県 男性」と自分で書いたメッセージを秘かに忍ばせて、選手たちに「これ、ノリさんじゃね?」と突っ込まれたり。緊張をやわらげるために、メンバーと共に笑ってリラックスできる時間をつくるようにしていました。

自分のプレーを信じ、仲間を信じて、
失敗を恐れずチャレンジすることでW杯優勝へ

サッカー日本女子代表監督に就任した頃から、いつも選手たちに伝えていたのは、「自分のプレーと仲間を信じて、失敗を恐れずにチャレンジすること」です。失敗したらどうしよう、というネガティブな考え方では本番で実力を発揮できません。大舞台でチャレンジできることを楽しみながら、緊張を力に変えていくことが優れたパフォーマンスを生むのです。また、チームプレーであるサッカーの場合、共に戦うメンバーに支えられているという想いが、世界と戦うプレッシャーと相手チームに打ち勝つ原動力になります。 広いフィールドで行われるサッカーは、監督一人で全てをマネジメントすることはできません。だからこそ、仲間と信頼し合いながら、個々のプレーヤーが臨機応変に判断できるチームをつくることが勝利を掴むためには必要なのです。戦術やスキルはもちろんですが、10代の若いメンバーから澤 穂希選手のようなベテラン選手まで、同じ想いを共有して試合に臨めたことが、ドイツW杯優勝という大きな成果につながったのだと思います。

弱点より長所にフォーカスすることで、
人は本来の力を発揮できる

スポーツでも、ビジネスでも、人を育てる時に大切なのは“弱点よりも長所にフォーカスする”ことだと思います。指導する側としては、弱点を修正して成長させてあげたいという気持ちになりがちですが、人は弱点ばかり指摘されると脳が拒否反応を起こしてやる気を損ねてしまうのです。サッカーを例にすると、攻撃が得意な選手に守備が苦手だからと守備練習ばかりさせていると、モチベーションが下がり、パフォーマンスも落ちてしまいます。私の経験では、得意分野と苦手分野に取り組む割合を「2:1」にすることがうまくいく秘訣です。正に当時の岩渕 真奈選手がそうで、彼女には攻撃に集中した時に守備への対応が遅れるという課題がありました。そこで、得意な攻撃面を伸ばしつつ、守備への切り替えを意識させることで、プレーヤーとしての実力が格段にアップしたのです。弱点は本人も意識しているもの。まず長所を評価して信頼を獲得することが、良好な人間関係をつくる意味でも大切なのだと思います。

緊張やストレスを乗り越える
“知好楽(ちこうらく)”の精神

私の好きな言葉の一つであり、サッカー日本女子代表のチームづくりにも活かしたのが“知好楽(ちこうらく)”の精神です。“知好楽”とは「これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず。」という、孔子の『論語』にある一節から生まれた思考法。要約すると「何事も楽しんでやっている人には敵わない」という意味なのですが、緊張やストレスを乗り越えて実力を発揮するためには役立つ視点ではないでしょうか。
私も24年間、会社員生活を送りましたが、ビジネスの世界で戦う人にとって営業やプレゼンなども負けられない勝負だと思います。重要な場面ほど緊張やプレッシャーは高まるもの。そんな時こそ、責任ある役割を任されたことに感謝しながら、ポジティブなイメージを持ってチャレンジしてください。緊張やプレッシャーを楽しさに変えられるマインドこそが、成功をもたらすものですから。

PROFILE

大宮アルディージャ トータルアドバイザー
十文字学園女子大学 副学長
サッカー日本女子代表 前監督
佐々木 則夫 先生
2006年「サッカー日本女子代表」のコーチに就任し、2007年監督へ昇格。
2008年北京オリンピックベスト4、2011年ドイツW杯優勝。
2012年ロンドンオリンピック準優勝、2015年カナダW杯準優勝。

帝京高等学校3年次、主将としてインターハイ優勝。日本高校選抜主将。
明治大学を経て、NTT関東サッカー部(大宮アルディージャの前身)でプレー。現役引退後は指導者に転身。
2007年、サッカー日本女子代表の監督に就任し、2008年北京オリンピックベスト4、2011年ドイツW杯優勝、2012年ロンドンオリンピック準優勝、2015年カナダW杯準優勝など輝かしい成績を残す。
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