日々の緊張・イライラとみんなどう向き合ってるの?
緊張・イライラ対策のスペシャリストに聞いてみました。

『毎日のストレスに“香り”のススメ』 対談 奥田弘美先生 塩田清二先生 『毎日のストレスに“香り”のススメ』 対談

奥田弘美先生 塩田清二先生
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第2回は、日本のアロマセラピーの第一人者である塩田清二先生と、緊張・イライラLABO監修役であり精神科医の奥田弘美先生による対談。
それぞれの専門領域から現代のストレス社会に有効な「香りのチカラ」についてお聞きしました。

医療の現場でも注目され始めた
“やわらげる”香りのチカラ

—まず、塩田先生に日本のアロマセラピーの現状についてお話を伺いたいと思います。

塩田先生(以下、塩田):いま日本には、エッセンシャルオイルが200種類以上あるのですが、実は、オイルそのものの機能性や安全性について定められた基準はありません。例えば、アロママッサージを受けると気持ちがいいのは確かですが、生理的にどのような効果があるかについては科学的根拠がないというのが現状です。実際にその香りをかいだときに、人にどんな影響が出るかについて、医学的・科学的に調べることが必要だということで、我々の学会は研究を重ねています。

—それは一般的なアロマセラピーとは違うということでしょうか。

塩田:はい、我々は「メディカルアロマセラピー」と呼んでいます。こうした研究はアメリカやヨーロッパでは進んでいるのですが、日本でもきちんと科学的なエビデンスをとっていこうと。そして、正しい香りの使い方を推奨しています。

—なるほど。そうした科学的なアプローチが進む中で、いま医療の現場でも“香りのチカラ”が注目されていると聞きます。

塩田:現在、アロマセラピーは主に痛みの緩和ケアとして、医療・看護の現場でも使われ始めています。痛みがやわらぐことで、睡眠がとりやすくなりますよね。やはり、睡眠はとても大事ですから。アロマセラピーはそうした補完医療的な役割を担っています。

起床、仕事、睡眠
アロマセラピーでリズムを整える

—奥田先生も精神科医として毎日の睡眠の見直しを提唱されていらっしゃいますね。

奥田先生(以下、奥田):そうですね。一般の方でも、仕事でストレスが溜まって人が活動するための交感神経の緊張がおさまらずに、心の不調を感じている方が増えています。そうした方に対して、脳を休ませるために、夜にきちんと睡眠をとることをおすすめしています。それから、ゆったりと入浴することや落ち着いた音楽を聞くことも。つまり、緊張・イライラをやわらげるために、リラックスを促す副交感神経を活性化させるわけです。その方法のひとつとして、アロマセラピーは有効になる可能性がとても高いですね。

塩田:そうです。しかも香りはダイレクトに脳へ届きますから、非常に速い。奥田先生もおっしゃるとおり、現代社会では朝日とともに起きて日が沈んだら眠るという、人間本来のリズムが崩れてきています。そんな中で、1日のリズムをきちんと調節する方法として香りを使うのはとてもいいですね。例えば、ラベンダーやオレンジスイーツといったリラクゼーション系のエッセンシャルオイルを寝る前にティッシュやハンカチに一滴たらして、枕元に置いておくといいと思います。

奥田:その方法は、実は私も実践しています!ストレスの多い今こそ、アロマセラピーを試してみるべきですね。

桜の香りと日本人の深い関係

—日本アロマセラピー学会では他にどのような研究をされているのでしょうか。

塩田:いま我々の学会では、桜の香りを研究していまして、まだ研究段階であるのですが、桜の香りにもリラクゼーションの作用があることが最近わかり始めました。ですから、昔から日本人が親しんでいるお花見というのは、桜を楽しみながらお酒を飲んで血の巡りをよくして、なおかつ香りをかいで自然とリラックス状態を促進している。香りは目に見えませんが、日本人は経験則でわかっているのかもしれませんね。それを科学的に証明できれば、桜の香りもまた、エッセンシャルオイルとして世の中に出していくことができます。

奥田:それは楽しみですね。ぜひ実現してほしいです。

まずはお風呂で
今日からできる簡単アロマセラピー

—アロマセラピーにまだ馴染みがない方は、どんなことから始めるのがよいでしょうか。

塩田:例えば、入浴です。すこしぬるま湯のお風呂に入ってある程度血流をよくしてから、ひのきの香りのオイルを浴槽に2、3滴入れる。ラベンダーやオレンジスイーツもいいと思います。お風呂に浸かって、リラックスする音楽も聞きながら、いい香りをかぐというのは非常にいいです。

奥田:それは利用しない手はないですね。五感を使って副交感神経を活性化すれば、質の高いリラクゼーションが得られますよね。

—他にはどんな香りがよいでしょうか。

塩田:始めやすいのはオレンジ、レモン、グレープフルーツといった柑橘系ですね。男女を問わず日本人の多くは柑橘系を好む傾向があります。そうした香りは日常生活の中にもありますから、さほど抵抗もなく始められると思いますよ。ちなみに、柑橘系はどちらかというと作業に集中する時に使うといい香りです。

朝と夜、仕事とプライベート
香りの正しい使い方

奥田:柑橘系は集中するときにいいんですね。実は、私はレモンの香りをかぐと気持ちがいいので、就寝の時に使ったりしていたのですが。逆だったようですね(笑)

塩田:たしかに気持ちはいいと思いますが、レモンを使うならむしろ朝ですね(笑)。整理すると、リラックスして緊張・イライラをやわらげるためには、ラベンダー、オレンジスイーツ、それからイランイランやローズもそうですね。集中力アップには、レモンやオレンジ、グレープフルーツといった柑橘系がよく用いられます。ただ「いい香りだな」で終わるのではなく、香りの機能をよく理解して使うことが大切です。

奥田:オレンジスイーツとオレンジは名前が似ていますが、作用がちがうのですね。そうすると、寝室・お風呂ではオレンジスイーツやラベンダーを使って、柑橘系は仕事中に「集中力が落ちてきたな」という時にハンカチやティッシュに数滴たらして近くに置くといいですね。

塩田:はい。それから、室内に香りを広げるディフューザーを使うのもいいですし、オイルを皮膚にすりこんでもいいですし、マスクの内側にアロマスプレー(※)で香りをつけるという手もあります。香り付きマスクをして家から出勤すれば、オフィスに着く頃には気分よく仕事が始められると思いますよ。

※本記事に掲載のアロマスプレーについては、農業生産法人 吉見メディカルファーム株式会社までお問い合わせください。

エッセンシャルオイルの選び方
大切な2つのポイント

奥田:ちなみに、皮膚に使う場合は、エッセンシャルオイルそのまま使うのはいけませんよね。

塩田:皮膚に使う場合は、専門店でキャリアオイルとブレンドしてもらう必要があると思います。最近は、3〜5%濃度のエッセンシャルオイルがお店で手に入ります。100%では刺激が強すぎて危険です。お店でオイルを選ぶときの大切なポイントはふたつ。まず、ヨーロッパの「ECOCERT(エコサート)認証」があること。これは国際有機認定機関による認証なので、信頼できる目印になります。この目印があれば、まちがいなく天然素材を使ったエッセンシャルオイルといえます。もうひとつのポイントは、成分分析をした表がきちんとセットになっているかどうか。この2点をチェックして選ぶのがよいと思います。

—ありがとうございます。普段の生活にアロマセラピーを取り入れる方法がよくわかりました。それでは最後に、このサイトを見ていただいている方々にメッセージをお願いします。

塩田:ビジネスパーソンの方は特に本当に知識欲が旺盛ですよね。ですから、アロマセラピーについても、なぜ香りでリラックスできるのかをきちんと知りたいと思う方が多いのかもしれません。そういった意味でも、まずはきちんとした書籍などで情報を集めて、知識を得て、理解した上で、毎日の生活に香りのチカラを取り入れるのがいいと思います。

PROFILE

医学博士 日本アロマセラピー学会 理事長・星薬科大学教授
塩田 清二 先生
1974年 早稲田大学教育学部生物学研究科卒業
1977年 新潟大学理学研究科修士課程修了
日本におけるアロマセラピーの科学的・医学的研究の第一人者。研究に携わる傍らSHIODAライフサイエンス研究所株式会社を立ち上げ、アロマ研究の成果を活かした製品開発・販売や情報発信を行っている。
[主な著書]
「〈香り〉はなぜ脳に効くのか アロマセラピーと先端医療」(NHK出版)
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