日々の緊張・イライラとみんなどう向き合ってるの?
緊張・イライラ対策のスペシャリストに聞いてみました。

『精神科医が実践するイライラ対処術』 精神科医&作家 奥田 弘美 先生 『精神科医が実践するイライラ対処術』 精神科医&作家 奥田 弘美 先生

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心の疲れは、脳の疲れ
まずは、毎日の睡眠と食事を見直すことから

「ストレス社会」と言われて久しいですが、緊張やイライラを感じる方が増えています。そしてそれが高じて生活や仕事にも支障が出るレベルになる方も少なくありません。このようなひどい緊張やイライラは一般的に心の不調だといわれますが、実はベースにあるのは脳の疲れなのです。実際に心をつくっている最終的な部分は脳だということがわかっています。いろんなプレッシャーやストレス、人間関係のイライラなどの心の不調は、すべて脳が疲れているというサインでもあるのです。なので、脳をきちんと休息させることがまず必要です。その基本はやっぱり睡眠ですね。心が疲れている方やストレスで体調が優れない方には、まずカウンセリングで夜に6〜7時間以上は連続して寝てくださいとお伝えしてます。

もうひとつ大事な柱が食事。「心と食事は関係あるの?」と感じる方も多いと思いますが、脳を動かすための栄養をとらないと脳が元気になりようがありません。食事内容もジャンクフードやカフェイン・アルコールを控えて頂いて、きちんと栄養になるような上質なタンパク質やビタミン・ミネラル、それからほどよい炭水化物の組み合わせがベストです。バランスのとれた食事は体だけじゃなくて脳にもいいのです。 イライラしやすかったり、怒りっぽい人は、それを助長するような食生活をとっていることが意外と多い。炭水化物や甘い物を多量に単品食べしたり、カフェインをガブ飲みしたり、アルコールも過剰に飲むと余計に脳が疲れてしまいます。

人間関係によるストレスが顕著
心の疲れにもっと敏感になろう

カウンセリングにいらっしゃる方は、人間関係でのストレスが原因になっているケースが最も多いですね。ほかにも、長時間労働や過剰なプレッシャーも大きな原因のひとつです。少人数で多様な仕事をこなすという状態が多いようで、過剰なプレッシャーやストレスがかかっていて、仕事のことが頭から離れず眠れなくなったり、それが原因で脳が疲れ果てて、うつ気味になってしまう方が多く、特に男性は心の疲れに気づけない方が多いように感じます。カウンセリングしてみると、実は肩こりがひどいとか夜なかなか寝つけないとか、実際に体に症状が出ています。体と心は表裏一体なので、体に不調を感じる時は自分の心の声もしっかり聞いてあげてください。きっと『休みたい』と体も心も叫んでいるはずです。自分を叱咤激励して仕事をするような頑張り屋さんの方が、実はストレスを溜め込みやすく、うつや心身症になりやすいのです。

オフをきちんととる
自分をゆるませる時間の充実

睡眠と食事という基本ができた上で、リラックスしてほしいです。自分の好きな音楽を聞くとか、アロマをくゆらすとか、自分の好きなラジオやテレビを視聴するとか、なんでもいいです。ただしスマートフォンやゲームなどのIT機器は避けてください。これらは脳をさらに疲れさせて危険です。とにかくリラックスしてください。できるだけ穏やかな気分で心を緩められる時間をたくさんとっていただくことが緊張やイライラ、心の疲れに有効な一番の方法です。たとえば、大事なプレゼンがある前日は早めに寝て睡眠時間をしっかりとるとか、お風呂にゆったり入るとか、おいしい食事をとるなどしてください。緊張やイライラがひどい日ほど意識してゆったりできる時間を多めにとって、オンとオフのメリハリをつくるという感じです。それからつい先のことを心配しがちですが、「今起こってない未来のことを心配しても仕方がない」と開き直ることも大事です。私自身も「未来の心配はやめよう、まず今に集中して楽しもう」と自分に言い聞かせ、オフの時間を充実させることを心掛けています。

デジタルスピード社会で
人はオンとオフの切替が下手になっている

現代は、ビジネスにしろ、コミュニケーションにしろ、すべてがデジタルスピードになっています。でも人間はもともとアナログなので、デジタルスピードであらゆるものが進むようになっていることで、脳に負担が起こりやすいのです。たとえばインターネットやメール。それらが発達したために、特に働いている方はオンとオフの区別がつかなくなっています。家でも仕事ができるし、早朝・夜中にテレビ電話で会議をおこなったり、そういうことが当たり前にできてしまいます。10〜20年前はそういうことができませんでしたので、インターネットの発達は便利な反面、脳にとっては大きな負担になっていると思います。仕事に関わっている限りはオンの状態なのです。オンというのは緊張しているということで、つまり交感神経が優位になり、副交感神経というリラックスの神経がオフになっている状態です。交感神経というのは活動するために働く神経です。それがずっと働き続けてしまっているとリラックスできません。

不完全なコミュニケーションは
知らず知らずのうちに心を疲労させる

普段のコミュニケーションも、今はメールやSNSが主体になりますので、夜中でも友人と気軽にコミュニケーションできてしまいます。誰かとコミュニケーションすることは基本的に楽しいことなのですが、ともすれば、人間関係はストレスの原因になります。特に、SNSやメールは文字でのコミュニケーションなので、非常にストレスが発生しやすく、緊張・イライラを助長することにつながります。文字から受ける印象は人それぞれ違いますので、たとえば、「反省した方がいいよ」と優しく言ったつもりでも、すごくキツく感じられたりすることもあります。文字が主体というのは、不完全なコミュニケーション方法なのです。電話であれば声のトーンやしゃべり方といった聴覚情報が入りますし、直接会って話せば相手の表情や身振りなどの視覚情報も入ります。やはり優れたコミュニケーションは「会う」ことです。最近は、SNSでの交流を気分転換にされている方が多いですが、リラックスを目的とするオフの時間は控えめにするのが良策だと思います。またイライラや不安、緊張がひどいときは、SNSだけではなく、スマートフォンやパソコン、ゲーム類などには触らないほうがいいでしょう。これらはすべて脳の疲れを助長させてしまいますから。

ストレスはゼロにならない
上手に付き合うことが大切です

人は生きている限り、何かしらストレスはかかっています。でもストレスが絶対に悪いわけではなく、ほどよいストレスや緊張というのは脳の覚醒・刺激になります。ワクワクしたり、やる気が出たり、自分の成長につながったります。むしろ、なにも刺激がないところでボーッとすることに人は苦痛を感じるのです。それは言い換えれば、退屈やマンネリ。ほどよい緊張があって、弛緩があるというバランスが、人間の心と体にすごく必要なことです。なので、ストレスをゼロにするのではなく、ストレスと上手に付き合うという考え方をもっていただきたいです。
私自身も、完璧にストレスをコントロールできているわけではなくて、皆さんと同じように仕事でストレスを受けたり、子育てや人間関係で悩んだり、緊張・イライラすることがあります。だからこそ、自分自身が試してみて効果があったと思うものを対策方法としてご提案しているのです。そしてこれからも、緊張・イライラに悩む現代人のひとりとして、いろんな方法を探し続けていきたいと思っています。心のセルフケアができることは、今のストレス社会を生き抜くため欠かせないスキルです。今回ご紹介したような方法から、まずはぜひ実践していただければと思います。

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